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畠山 丈洋
代表取締役(2021年就任)
1985年 大学卒業後、ソニー株式会社に入社。
以降、ミスミグループ本社 執行役員、ニトリホールディングス 執行役員を経て、ファンド投資会社 代表取締役、中小規模企業の取締役等を歴任。経営再建や成長企業創出に従事。
2021年8月 GEクリエイティブ 代表取締役に就任。
人生に無駄なことはひとつもない。チャレンジする経験が、人生を豊かにする。
■「自分の強み」を模索していた新人時代
新卒でソニーに入社しました。入社当時の私は、生意気な社員だったと思います。ですが頭ごなしに怒られたことはなかったですね。ソニーは言いたいこと自由に言える雰囲気で「出る杭を伸ばす」企業風土でしたから。自分で考え言葉にし、自ら行動に移し結果を出すという姿勢が身につきました。そして当時の社内には「3年後、5年後あんな風になりたい」と思えるような先輩が多くいました。しかし先輩のやり方の真似をしても勝てるとは思えず、自分の強みを模索していた新人時代でした。
実は、入社して半年後に子会社の販売会社へ出向したとき、会社を辞めたいと思ったんです。営業の仕事は初めてだったのですが、「習うより慣れろ」といった雰囲気で、体系的な教育はありませんでした。どうすれば売り上げを上げられるかわからず悩みました。また、長時間労働が当たり前で、週末は家電量販店での販売応援のため月に2~3日ほどしか休めず、月の残業時間は100時間を超えました。本社とはあまりに違う風土で馴染めずしんどかった。ただ、出向期間は2年の約束だったため、なんとか踏みとどまりました。理不尽なこともありましたが、社会の厳しさを知った2年間でした。
■自分が正しいと思うやり方でやるしかない
2年の出向期間を終え、本社に異動し国内マーケティングに配属になりました。素晴らしい上司や先輩に恵まれて、どんどんアイデアを出していきました。そのうちに、担当商品が次々にヒットし、社内で評価してもらえるようになったんです。そこでやっと自分の強みに気づきました。「自分ひとりで商品を売るのは決して上手ではないが、多くの人の力を借りて仕事を進めるのが自分には向いている」と。組織やチームで目標を達成することに、大きな歓びを感じましたね。そして自信がついたのと、国内でひと通りの経験をしたということで、海外駐在をしてみたいと上司に意志を伝えました。入社して9年目のことです。
希望が叶い、最初に駐在したのは北京です。現地に「ソニーチャイナ」という合弁会社を作り、ゼロから営業組織を立ち上げました。現地の人を雇うところから始めて、トレーニングして、販売管理の部署を作り、中国国内に4か所の営業所を開設し……。3年間猛烈に働いて、売上100億円を達成することができました。
ただ、最初の一年半ぐらいはかなり苦しい思いをしましたね。日本との商習慣の違いから現地社員の反発を食らったんです。悩みながらも「自分が正しいと思うやり方でやるしかない」と吹っ切って、マネジメントを進めていきました。そして小さな成功を繰り返すうちに、仲間ができてきた。信用を積み重ねることで、社員が協力してくれるようになりました。この経験が私を大きく成長させてくれ、今の経営者としての礎となっています。
■やらずに後悔するより、やって後悔したい
10年に渡る海外駐在の最後にソニーマレーシアの社長を任され、会社経営の面白さを知りました。その頃、いろんな経営者の方の話を聞く機会があり、ソニーを辞めて経営者としてチャレンジをするのも面白いかなと思い始めたんです。大企業の看板を外して勝負できるのか悩みましたが、「やらずに後悔するより、やって後悔したい」と思い、退職を決断しました。
その後、経営のプロとして知られる三枝匡さんの下で働いてみたくて、三枝さんのいるミスミグループに転職しました。最初の仕事は赤字になっていた子会社の再建で、見事成功して社長賞をもらい、執行役員になれたんです。当時は「自分はできる」と思いあがっていましたね。ところが、その後に担当した別の子会社の再建がうまくいかなかったんです。リーマンショックが直撃したこともあって、営業所の閉鎖が決まり、60人の従業員を解雇せざるを得なくなってしまいました。これはつらかった……。今でも思い出すと胸が苦しくなります。
その後転職した会社でも、いろいろとありましたよ。もちろん自分の力を発揮できた機会もありましたが、成功と挫折を繰り返し、ジェットコースターみたいな激しい会社人生だと我ながら思います。
■会社を自身の成長のために利用してほしい
今まで失敗したこともたくさんありますが、後悔はないんです。悪いことも含めて、人生に無駄な経験なんかひとつもないって、心の底からそう思っています。一つひとつの仕事は点と点でしかないように見えますが、この年になると「あのときの経験が、こういうふうに生きているんだ。全部つながっているんだな」と実感できます。例えば、ソニーでの出向時代に悩んだ経験から、「体系的な教育をし、労働環境を良くしなければならない」と気づくことができ、現在のマネジメントに活きています。ですから若手の方には、ぜひ積極的にチャレンジして苦労も経験してほしい。苦労からは多くのことが学べ、その分豊かな人生になりますから。
私は先輩方に恵まれていろんな経験をさせてもらいました。先輩方に直接恩返しするのではなく、今度は次世代の人に私の経験を伝えたい。大げさな言い方かも知れませんが、こうやって人類は歴史を刻んできたのではと思い、若手を育てたいという強い使命感があるんです。この思いから社内に「GE大学」を作りました。GE大学は会社独自の人材育成プログラムで、ITスキル、ものづくり、マネジメントを学べます。中でも「ビジネスリーダー育成講座」は絶対に受けてほしいですね。どこのMBAの講義よりもクオリティが高いと自信を持って言えます。
私は日頃から社員に「会社のために仕事をするなんて思わなくていい。会社を自分自身の成長のために利用してほしい」と伝えているんです。個人の成長が企業の成長につながると考えており、社員が力をつけるための投資やサポートは惜しみません。 GE大学もありますし、プロジェクトの配属は社員の希望を最大限考慮しているため自分のキャリアを描きやすいと思います。文系学科を卒業したSE未経験の社員でも、入社3年後ぐらいにはスキルを身につけて活躍できていますね。今は定年までひとつの会社で勤め上げるのは難しい時代だといわれています。もちろんGEクリエイティブで長く働いてほしいですが、もし独立したいと思ったときに、どこでも戦えるスキルを会社にいる間に身につけておいたほうが絶対に得だと思うんです。
■技術力と創造力で人々を笑顔に
GEクリエイティブは、リスクを取ってでも挑戦したいと手をあげる人にチャンスを与えられる会社です。今後は若手社員を積極的に管理職に抜擢しますし、年収も今の1.5倍にする計画を立てています。ただ、ライフステージによって働き方を変えたい人もいると思います。男性にも育児休業を取ってもらっていますし、在宅勤務やコアタイム1時間のフレックスタイム制を取り入れています。自分に合った働き方をしてほしいですね。
これから当社が目指す方向として、IT技術を使い中小ものづくり企業の生産性を劇的に上げて、日本を元気にしたいと思っています。日本の中小ものづくり企業は素晴らしい技術力を持っていますが、資金力や人材不足の問題があり、製造過程の効率化までに手が回らないのが現状です。そこで工場のシステムをデータベース化してAIやIoTを活用して工場を稼働させれば、生産性が高まり、製品の低価格化を実現できます。現在外部の声を聞きながら、そのためのパッケージの試作を重ねているところです。ハードルは高いですが、うまくいけば社会を大きく変えられる可能性が十分にあります。
技術力と創造力で、人々を笑顔にしたいというのが私たちの思いです。ビジョンに共感し、「学びたい」「成長したい」という意欲が旺盛なみなさんと一緒に働けることを楽しみにしています。
代表取締役社長 畠山 丈洋
スマートファブ構想
GE クリエイティブが目指す世界―Smart FAB(スマートファブ)構想とは
Vision
ものづくりを変革するITソリューションカンパニー
日本の中小ものづくり企業を「スマートファクトリー」へ転換
日本の製造業をIT技術で活性化
Background
日本の中小ものづくり企業の競争力を高める
日本の製造業は、すばらしい技術を持っています。それは大企業に限ったことではありません。「下町ロケット」で描かれたように、町工場が世界でもトップクラスの技術を持っていることも、日本では珍しくありません。
それなのに、中小ものづくり企業では思うような利益を出せていないのが現状です。その理由のひとつが、昔ながらのカスタマイズ製造です。
人の手による製造が中心で、製品ごとに独自の生産ラインを作っているため、どうしても少量しか作れず、高価格になってしまいます。
では、中小ものづくり企業ならではの独自性を活かしつつ、製造量を増やし、低価格にするにはどうしたらいいのか?
その答えのひとつが、マス・カスタマイゼーションです。
マス・カスタマイゼーションとは、マス=大量生産とカスタマイズ(特注、個別生産)という相反する2つの言葉を組み合わせた造語で、カスタマイズした製品の大量生産が可能となり、従来よりも価格を抑えることができます。
このマス・カスタマイゼーションを実現するために必要不可欠なのが、スマートファクトリー化です。スマートファクトリーとは、AIやIoTなど先端技術を取り入れることにより、業務プロセスの改革や品質・生産性の継続的な向上を目指す工場のこと。企業単体でのスマートファクトリー化だけでなく、日本中にある工場のシステムをデータベース化して、AIやIoTを活用して工場を稼働させれば、国際競争力をぐんと高めることができます。
Strength
GEクリエイティブがものづくり企業を支援する理由
なぜ、GEクリエイティブが中小ものづくり企業のスマートファクトリー化を支援するのか? それには3つの理由があります。
fact1. ものづくりのDNA
GEクリエイティブの前身の会社は、「もの」の中に組み込むソフトウェアを開発するところから始まりました(当時の役員は、Pepper(ソフトバンク)やセグウェイの開発にも関わっていました)。原点であるものづくりへの想いは今も受け継がれており、ドローン、ロボット、AI、IoT、製造現場におけるシステム開発など、ものづくりの現場でGEクリエイティブの技術が活かされています。
fact2. 成長が見込まれる領域への集中的な投資
ITのトレンドを見てみると、初期はホームページやゲームの開発、直近10年ではモバイル対応やクラウドへの移行が主流です。次に大きなトレンドになるのが、AIやIoT、スマートファクトリーに代表される製造DXだと考えています。中長期の戦略として、この領域に積極的な投資を行っていきます。
fact3. グループでシナジーを生み出す
GEクリエイティブが属しているMGグループには、金属加工や装置をつくるメーカーがあります。ソフトウェア、ITとものづくりをかけ合わせることで、わたしたち独自の価値提供ができるのではと考えています。
Solution
パッケージとコンサルティングでスマートファクトリーの実現をサポート
スマートファクトリー化には、膨大なコストやリソース、ノウハウが必要なため、中小ものづくり企業が自社単独で実現するのは、むずかしいのが現状です。
そこでGEクリエイティブでは、コアになる部分をパッケージ化して提供しようと考えています。足りない部分や企業ごとに変動が大きいところは、追加で開発したり、モジュールを別に作ったり、他のソフトウェアと連携させたりなど柔軟にカスタマイズして、自社にぴったりのシステムが作るイメージです。
ただ、パッケージを提供するだけでは、本当の意味での解決にはなりません。企業自身も気づいていない課題やニーズを見つけ、解決策を提示し、スマートファクトリーを実現させ、継続的な改善をしていく。中小ものづくり企業の良きサポーターとして、時にはリードする存在として、貢献していきたいと考えています。